槍ヶ岳西稜報告

孫槍ピークに立つH

1)はじめに

久しぶりにいわゆる「本チャン」に行ってきた。

今回のパートナーとは海外でクライミングを共にしたことはあるが、本チャンに一緒に行ったことはなかった。

「初めての人と初めての本チャンルートに行く」ということは、私自身そんなにないので行くまでは少々緊張していた。加えて、核心部がオフィズスサイズのクラックということで、かつて登った宮崎・比叡山のニードル左岩稜のハンドサイズでかなりビビったことを思い出し、それにも緊張していた。

槍の岩質は比叡山のような花崗岩ではない(※詳細下記)ので大丈夫と自分を納得させていたのだが。。。

 緊張の中、実際に取り付いてみると、そんなに難しいところもなく、誠に快適。

岩は固く(ガレ場はあるけど)、扉の写真のように、なんだか日本離れしている部分もある。

そして、なにより大槍の穂先に飛び出るという抜群のロケーション。

この頃はやりのルートということに深く納得したルートであった。

※槍ヶ岳山頂付近の岩質について調べてみた。

「凝灰角礫岩」という火山岩だそう。

これは非常に硬い岩石で、氷河の浸食にも強いので、結果的にああゆう穂先になったということだ。

 

2)概略

 ルートについて

 ・残置が数多くある。カムもエイリアンも持って行ったが、全く使わず。単に往復ボッカの重しとなっただけだった。

 ・核心を抜けたら、基本稜線の簡単なところを選んで大槍まで進む。

 ・途中グージョンボルトの支点もあり。数は多くないが、それなりに登られている証拠だろう。

 

②新穂高の駐車場について

新穂高の駐車場には注意が必要。それを以下に記す。

当初、新穂高から槍を目指すつもりだった。

新穂高には何回も来たことがあるので、駐車は問題ないと見ていた。それが甘かった。

深夜に新穂高に到着し、以前の無料駐車場を探したが、有料しかない。

それもロープウエイに乗る人用になっている。

周りを探した。すると登山者用駐車場があった。でもなにやら書いてある。

WEB予約駐車場」

早速、H水さんに調べてもらう。今時点で周りの駐車スペースには空きがあるから大丈夫という期待もすぐに裏切られた。「土日はいっぱい」 そりゃそうだ。

念のためWEB予約の要らない第三駐車場ものぞいたが、警備のおじさんに「満車です」

と制止された。

「駐車場問題で撤退」という文字が頭をかすめたが、上高地からの入山に頭を切り替え、ぽっぽ会にもメーリスで連絡した。

そして安房トンネルを抜け、茶嵐駐車場の下のいつもの公園に前泊用テントを張り、就寝。

以前新穂高に来たときにお風呂に入ったときに、新穂高周辺での違法駐車がひどく路肩に路駐している車が100台近く、駐車違反の切符を切られたとの、壁新聞が貼ってあった。WEB予約駐車場はその対策だろう。

 

③茶嵐での前泊について

茶嵐駐車場の下にトイレのない公園がある。

一見駐車場に入るようなかたちで進入すると左の駐車場に続く道とは別の道が右下に続いている。そこを左から回り込むかたちで降りていくと、降りて平たんになったところの横に公園がある。普通のテントなら3張くらい張れる。ただし行ったときは草ぼうぼうだった。

 

2)日程など

2024年9月6日(金)~9月8日(日)

【メンバー】 H水(ぽっぽ会員外)、A

 

3)報告  

②9月6日  上高地入山~明神~徳沢~横尾~殺生小屋 ぼっかに耐える日。

5時起きしたあとタクシー予約して茶嵐に来てもらおうと電話をしたが、いまの時間だとバスのほうが良さそうとの話もあり、沢渡第一駐車場に移動。

なんとかぎりぎりで始発バスに乗れて、上高地へ。

バスは茶嵐通過時に既に満席だったので、第一駐車場まで降りていてよかった。

上高地から明神に行く道。

今日は工事で河童橋を渡って、梓川右岸を進まないといけない。注意書きはいたるところにあったのだが、よく見ていなくて、いつもの道を行ってしまう。河童橋まで戻るはめになり、10分のタイムロス。正常化バイアスの話になった。

それにしてもH水さんの歩きが早い。

メトロノームで表現したら私は「タッタッタッタッ」。H水さんは「タッ。タッ。タッ。タッ。」ペースが全然違う。

それもそのはず、H水さんは180cm越えの大男。それに引き換え私は。。。。

ちなみに槍から帰ってきて、山岳会の人にそれを言ったら、「大丈夫ですよ。

A山さんもあと20cm伸びれば」と励まされた。

しかし、それは励ましになっていない。なにしろ20cm伸びても届かないからだ。

 

はともかく天気は良い。

 

槍沢ロッジまでH水さんに追い立てられながら登った。

でも休憩中にギブアップ。「先に行ってください。」

いつもは絶対にパーティー分散しないようにしている私からこの言葉が出るとは。

自分でも情けなくなったがしかたない。このペースで登ったら、明日動けなくなってしまう。

ということで、一人でひたすら辛い登りに耐えた。

登っても登ってもなかなか槍は見えてこない。

 

でも最後には見えた。

 

H水さんから遅れること40分。

ほうほうのていでテントに潜り込んだ。もちろんビールは飲んだ。

行動時間

コースタイム:10時間5分   実績:8時間半  比率:84

③9月7日 登攀の日

5時に起きようと言って、昨日17時に寝たのに、起きたのは5時半。

私たちのテントの前にテントを張っていた韓国人は既にいない。

まずは槍ヶ岳山荘に向かって登り始める。

山荘はパスし、ヘリポートの左側から下降を始める。

 

既に穂先にはいっぱい人が立っている。

探りながらアプローチを辿る。

上がったり下がったりを繰り返す。

この道が正しかったとは言えない。

途中で25m程の懸垂があったからだ。事前に見ていたアプローチ説明には懸垂はなかった。もしかたら上がり過ぎたのかもしれないが、それでもうまくアプローチできたと(勝手に)思っている。

そうこうしているうちに、行く手に取り付きらしい大きなテラスが見えたので

そこに向かっていく。そこはやはり取り付きだった。

上のほうに見える凹角(赤丸)が核心のジェードルだ。

 

緊張感が高まる時間である。

 

上の写真にもあるが、このスリングが目印だ。

 

以下グレードは広川健太郎「アルパインクライミングルートガイド」による。

旧版の同書には掲載無し。新版のみ。

 

1ピッチ目 Ⅳ+ 秋山

すぐ上に小ハングあり。朝イチからびびってしまうが、いったらなんのことはない。

なんたって残置は多い。

 

 

2ピッチ目 Ⅲ+ H水。

3ピッチ目 Ⅴ+ A山。

残念ながら写真なし。

Ⅴ+なので気合入れていったワイドクラックを持ったジェードル。ガイドブックに書いてあったようにアームバーも使ったが、クラックの外側にもホールドは豊富にある。

おそらくクラックの中に入り込むよりも、外側にいたほうが登りやすいと思う。

結局のところⅣ+くらいにしか感じなかった。(はあはあ言いながら登っていたが。) 

 

4ピッチ目 Ⅲ H

3ピッチ目の終了点の上にはハングが覆いかぶさっているので、そこを右に回りこむ。

 

ほどなくすると小槍のピークに到着。

 

子槍のピークから懸垂方向を偵察する。

 

この懸垂、降りすぎると復帰が面倒だし、稜線通りに行こうとするとちょっとテクニックが必要。

 

その後は簡単な岩稜を稜線に忠実に進む。

私は子槍の懸垂後に、クライミングシューズからアプローチシューズに履き替えた。

それで十分の岩稜。

途中にはこんな立派な支点があった。

おそらくガイドが打ったグージョンだろう。

 

定番の記念写真。

頂上ではいろんな人が待ってくれていた(んなわけない)

私が身に付けている登攀具を物珍しそうに見ている人が多かった。

そして一般道を降りてテント場へ。

着いたのは12時半ごろ。

 

もちろん祝杯だ!

 

②9月8日  殺生小屋から上高地下山。再びぼっかに耐える日。

ちょっと早起きしてヘッデン出発。

使わなかったカムとエイリアンは重いが、登れたので心は軽い。

とっても早いH水さんも今日は我慢してペースを合わせてくれる。

それでも私は必死で歩く。なんとかバスターミナルに到着して、下山を完了した。

 

行動時間

コースタイム:8時間5分   実績:6時間2分  比率:75

 

あーーーしんどかった~